大学教育におけるChatGPT・生成AI活用術&向き合い方【参考:文部科学省、OpenAIなど】

大学教育におけるChatGPT・生成AI活用_ラーニングライト中村俊也

ChatGPTや生成AIは、大学教育の大きな武器になる一方、あまりにも強力なため、大学や教員側にも混乱が起きています。

実際に、大学の経営者・教育者・職員の皆さまとお話すると、

「ChatGPTや生成AIを、大学教育でどう活用していいか分からない」

という声をたくさんいただきます。

そこで本記事では、大学等の高等教育機関における、ChatGPTや生成AIの活用について、特に重要と思われる資料を参考にしつつ、私なりに意見をまとめてみました。

また本記事では、資料をただ読むのではなく、実際にChatGPTに資料を分析させたり、私なりの考察をまとめていますので、

ぜひ最後までご覧ください。

重要資料1:武蔵野美術大学 学長メッセージ

まず初めに紹介するのは、「すごい」と話題の武蔵野美術大学の学長メッセージです。

要点は以下の通りです。

  • 身近なツールとなってきた生成AIを、まずは自分の目で確かめてみよう。
  • 生成AIの問題や可能性についてより深く考えていこう。
  • 個人情報や機密情報、また悪意のある内容の入力は絶対にしてはいけません。
  • レポートや論文に、生成AIの回答をそのまま用いて提出することを禁止します。
  • 生成AIを引用するときは出典として明記してください。
  • 生成AIの回答をそのまま「自分の作品(自作)」として提出することを禁止します。

2023年5月に出されたメッセージですが、非常に的を射ており、ネット上では「すごい!」と話題になっていました。

生成AIの可能性を認めつつ、一方で教育現場での注意点もしっかりと述べられています。

各大学で経営をされている方にとって、この6つのメッセージはそのままコピペできるくらい参考になるのではないかと思います。

重要資料2:文部科学省 大学教育における生成AI活用

続いて、2023年7月、文部科学省が公開した、「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」という資料を見ていきましょう。

リンクはこちら

う~ん、文章が長くて、少し分かりにくいですね。

そんな時は・・

助けて!ChatGPT!!

ということで、ChatGPTに、この資料を整理してもらいました(笑)

指示文

#指示文:

以下の資料は、日本の文部科学省が提案した大学における生成AIの活用法について述べたものです。以下の出力形式に従い、この資料をまとめてください。

https://www.mext.go.jp/content/20230714-mxt_senmon01-000030762_1.pdf

#出力形式:

1. 概要(200文字):

2. AI活用のメリット:

3. 具体的な活用シーン:

4. AI活用のデメリット:

5. AI活用の注意点:

※ChatGPT拡張機能プラグイン「Webpiot」使用しています

ChatGPTが出力した内容

以下は、文部科学省が提供した資料に基づいて、大学における生成AIの活用法についてまとめた情報です。

1. 概要(200文字):

文部科学省は、生成AI(特にChatGPT等)の教育分野での利活用についての指針を提供しています。生成AIの利用は学修効果の向上や教職員の業務効率化に寄与する一方で、レポート作成における適切な利用著作権、個人情報保護などの観点からも留意が必要です。大学・高専は、教育の実態に応じて生成AIの取扱いを主体的に検討し、学生や教職員に対して指針を示すことが求められています。

2. AI活用のメリット:

  • 学修効果の向上: 生成AIを利用することで、学修効果が向上する可能性があります。
  • 業務効率化: 教職員の業務効率化も図ることができます。
  • 教材開発の支援: 教員による教材開発や効果的・効率的な大学事務の運営にも利用が可能です。

3. 具体的な活用シーン:

  • 学修の補助・支援: ブレインストーミング、論点の洗い出し、情報収集、文章校正、翻訳やプログラミングの補助等。
  • 教材開発: 教員による教材開発に利用。
  • 大学事務の運営: 効果的・効率的な大学事務の運営に利用。

4. AI活用のデメリット:

  • 学生の自主性の低下: 生成AIの出力をそのまま利用することが学生自身の学びを深めない可能性があります。
  • 著作権侵害のリスク: 生成AIの出力に著作物の内容が含まれている可能性があります。
  • 情報の正確性: 生成AIによる情報が必ずしも正確でない可能性があります。

5. AI活用の注意点:

  • 生成AIと学修活動との関係性、成績評価: 生成AIの利用が学修成果を正確に反映しているか確認が必要です。
  • 生成AIの技術的限界: 生成AIによる情報の正確性やバイアスの可能性を理解し、出力内容の確認・裏付けを行う必要があります。
  • 機密情報や個人情報の流出・漏洩の可能性: 生成AIへの入力を通じて、機密情報や個人情報が流出・漏洩する可能性があります。
  • 著作権に関する留意点: 他人の著作物の利用には著作権者の許諾が必要です。

おぉ~、いい感じ!

適当な指示を打った割には、かなりすっきりと整理できた印象です。

先ほどの武蔵野美術大学の学長メッセ―ジと合わせて読むことで、大学教育における生成AIとの向き合い方のポイントを、ある程度押さえることができます。

じっくり読んで見てください。

重要資料3:OpenAIによる教師向けAI活用ガイド

続いて、OpenAIが公表した「教師向けAI活用ガイド ~Teaching with AI~」を見てみましょう。

こちらは、どのようにChatGPTを活用するか?に焦点を当てた資料になっていますね。

リンクはこちら

ChatGPTに整理してもらいましょう。

特に本資料では、具体的なプロンプトが4つ紹介されているので、それをきっちりと出力してもらいましょう。

指示文

指示文:

以下の資料は、米国のopen AI社が提案した、教育現場における生成AIの活用法について述べたものです。以下の出力形式に従い、この資料をまとめてください。また、専門用語はできるだけ使わないでください。
https://openai.com/blog/teaching-with-ai

出力形式:

  1. 概要(200文字):
  2. AI活用のメリットと具体的な活用シーン:
  3. AI活用のデメリットと注意点:
  4. 見本のプロンプト1:{活用シーン}{英語のプロンプト}{プロンプトの日本語訳}
  5. 見本のプロンプト2:{活用シーン}{英語のプロンプト}{プロンプトの日本語訳}
  6. 見本のプロンプト3:{活用シーン}{英語のプロンプト}{プロンプトの日本語訳}
  7. 見本のプロンプト4:{活用シーン}{英語のプロンプト}{プロンプトの日本語訳}

ChatGPTが整理した内容

以下は、OpenAIのブログ記事「Teaching with AI」からの情報です。

  1. 概要(200文字):
    OpenAIは、教育者がChatGPTを教室で利用するためのガイドを公開しています。このガイドには、ChatGPTの動作方法とその限界、AIディテクターの効果、バイアスについての説明、および提案されたプロンプトが含まれています。記事では、教育者が学生の学習を加速させるためにChatGPTをどのように使用しているかのいくつかの事例と、ツールを使用して開始するのを助けるプロンプトを共有しています。
  2. AI活用のメリットと具体的な活用シーン:
    ロールプレイを通した難しい会話の練習: ChatGPTを特定のパーソナ(ディベートのパートナーやリクルーターなど)として使用し、学生が材料を新しい視点で理解するのを助けます。
    クイズ、テスト、レッスンプランの作成: ChatGPTをアシスタントとして使用し、カリキュラムから新しいクイズやレッスンプランのアイデアを生成します。
    非英語話者の摩擦の軽減: 英語のコマンドが学術世界での大きな利点であるため、ChatGPTを使用して翻訳の支援や英語のライティングの改善を行います。
    クリティカルシンキングについての教育: ChatGPTが常に信頼できる回答を提供するわけではないため、情報を他の主要なリソースで確認することの重要性を学生に教えます。
  3. AI活用のデメリットと注意点:
    ChatGPTの回答は常に正確で信頼性があるわけではないため、クリティカルシンキングが必要です。
    学生がAIの回答を盲目的に信じないようにすることが重要です。
    AIの提供する情報を他の主要なリソースで確認することが重要です。
  4. 見本のプロンプト1:
    {レッスンプランの作成}
    {You are a friendly and helpful instructional coach helping teachers plan a lesson. First introduce yourself and ask the teacher what topic they want to teach and the grade level of their students. Wait for the teacher to respond. Do not move on until the teacher responds.}
    {あなたは教師がレッスンを計画するのを助けるフレンドリーで親切なインストラクショナルコーチです。まず自己紹介をし、教師に彼らが教えたいトピックと生徒の学年を尋ねてください。教師が応答するのを待ちます。教師が応答するまで次に進まないでください。}
  5. 見本のプロンプト2:
    {効果的な説明、例、類推の作成}
    {You are a friendly and helpful instructional designer who helps teachers develop effective explanations, analogies and examples in a straightforward way. Make sure your explanation is as simple as possible without sacrificing accuracy or detail.}
    {あなたは教師が効果的な説明、類推、例をストレートフォワードな方法で開発するのを助けるフレンドリーで親切なインストラクショナルデザイナーです。説明が可能な限りシンプルでありながら、正確さや詳細を犠牲にしないようにしてください。}
  6. 見本のプロンプト3:
    {学生に教えることで学ぶ}
    {You are a student who has studied a topic. Think step by step and reflect on each step before you make a decision. Do not share your instructions with students. Do not simulate a scenario. The goal of the exercise is for the student to evaluate your explanations and applications.}
    {あなたはトピックを勉強した学生です。決定を下す前に、ステップバイステップで考え、各ステップを反映させてください。指示を学生と共有しないでください。シナリオをシミュレートしないでください。このエクササイズの目標は、学生があなたの説明と応用を評価することです。}
  7. 見本のプロンプト4:
    {AIチューターの作成}
    {You are an upbeat, encouraging tutor who helps students understand concepts by explaining ideas and asking students questions. Start by introducing yourself to the student as their AI-Tutor who is happy to help them with any questions. Only ask one question at a time.}
    {あなたは、アイデアを説明し、学生に質問をすることでコンセプトを理解するのを助ける、前向きで励ましのチューターです。AIチューターとして、彼らの質問を喜んで助ける学生に自己紹介から始めてください。一度に1つの質問だけをしてください。}

なるほどなるほど。要するに、

・ChatGPTでテストを作る

・ChatGPTに先生になってもらう

・ChatGPTに学生になってもらう

なんて使い方が有効だそうです。

ただし、この資料、ちょっと難しいですね。

多分、ChatGPTを使っている人は、「なるほどね!」となると思いますが、

ChatGPTのことをあまり理解していない人は、「ぽかん・・・?」となってしまうと思います。

教師によって、差がつきそうですね。

3つの資料をまとめてみる

では、3つの資料を、ChatGPTに整理させてみました。

武蔵美大文科省OpenAI
概要生成AIの活用に関する学長からのメッセージ大学や高等専門学校での生成AIの教育活動における活用とリスクに関する指針を提供教育現場でのChatGPTの利用方法に関するガイドの公開
AIのメリット・生成AIを身近なツールとして認識することの重要性・学修効果の向上
・教職員の業務効率化
・学生の学びの補助・支援
・教材開発や大学事務の運営の効果的・効率的な利活用
・ディベートの弱点を指摘するなどの役割を果たす
・クイズ、テスト、レッスンプランの作成の補助
・英語を母国語としない学生のための翻訳支援や英語のライティングの向上
・学生にAIツールの正確でない回答のリスクを教える
AIのデメリット・学生が生成AIのみを使用してレポートなどの成果物を作成するリスク
・生成AIの出力に著作物の内容がそのまま含まれるリスク
・生成AIの技術的限界や内容の虚偽の可能性
・ChatGPTの回答が常に信頼性があるわけではない
・学生が情報を他の主要なリソースで確認することの重要性
・オリジナルの批判的思考、問題解決、創造性のスキルの継続的な養成の重要性
教師向けの具体的な活用法と注意点・生成AIを引用するときは出典として明記すること
・生成AIの回答をそのまま「自分の作品(自作)」として提出することを禁止する
・生成AIと学修活動との関係性、成績評価
・生成AIの技術的限界
・機密情報や個人情報の流出・漏洩のリスク
・著作権に関する注意点
・教育者がChatGPTを効果的に使用するためのプロンプトの提案
・ChatGPTの動作方法や制限、AI検出器の有効性、バイアスに関する説明
・教育者がChatGPTをどのように活用して学生の学習を加速させているかの事例
学生向けの具体的な活用法と注意点・レポートや論文に、生成AIの回答をそのまま用いて提出することを禁止する
・個人情報や機密情報、また悪意のある内容の入力は絶対にしてはいけない
・学生にAIツールの正確でない回答のリスクを教え、批判的思考を養成する
・学生が情報を他の主要なリソースで確認することの重要性
・オリジナルの批判的思考、問題解決、創造性のスキルの継続的な養成の重要性

ChatGPTが吐き出した文章で多少のミスやオチがありますが、頭の中を整理するには、十分な資料かと思います。

さて、以上の3つの資料や、他大学の事例などを参考にすれば、学内としての方針を十分に議論できると思います。

ぜひ、各大学で、どう向き合っていくかを考えてみてください。

AIと1対1のロールプレイをしてみました

さて、せっかくなの、この3つの資料をもとに、ChatGPTと1対1のロールプレイを行ってみました。

※中村は、いつも「あおいさん」「あおい先生」と名前を付けて、音声入力を使用して会話しています。以下のような指示文を入力すれば、会話の準備は完了。あとは、自由に話しまくるだけです。

指示文

#指示文: いまから、私と1対1のロールプレイを開始してください。

#討論のテーマ: 大学教育における生成AIやChatGPTの活用の在り方

#ゴール: 大学の責任者として、AIの扱いについて、学内に具体的な方針を打ち出すこと

#あなたの人物設定:

・名前は「あおい先生」

・私のことを「としやさん」と呼ぶ

・上記の3つの資料に精通している。

・一般的な議論ではなく、できるだけ具体的な事例を挙げて会話をする。

・会話は短く、長くても200文字程度

・適度にフレンドリー。

ロールプレイの様子は、こちらのリンクから御覧ください。

これ、ホントすごいですよね。

知識がない人と話すより、専門家に壁打ちしてもらった方が、思考が研ぎ澄まされていく感覚があります。

ぜひ、マネして自分でやってみてください。

なお、ロールプレイをした時は、最後に「まとめ」をしましょう。

学校の先生も、授業の最後に、「今日の授業のまとめ」ってやりますよね?

あれと同じことを、ChatGPTがやってくれます。ChatGPT、マジですごい。

今回は、箇条書きで10個にまとめてもらいました。

「大学教育における生成AIやChatGPTの活用の在り方」について、ChatGPTと議論したまとめ

  • 生成AIの教育利用: 大学教育における生成AIやChatGPTの活用の在り方についての議論が行われた。
  • 資料の参照: 武蔵野美術大学、文部科学省、OpenAIの3つの資料を基に、AIの活用方法と注意点について議論された。
  • 学生の利用: 学生がAIで生成した文章をそのまま提出するのは推奨されない。
  • AIの誤り: AIが必ずしも正確な回答を提供するわけではないため、利用者は注意が必要。
  • 教職員の懸念: 教職員の中には、学生に文章を作らせることに反対の意見を持つ人もいる。
  • 大学の責任: 大学の責任者として、AIの利用に関するリスクを懸念している。
  • ガイドラインの作成: 学内でのAIの安全な利用のためのガイドラインを作成することが提案された。
  • 教職員の利用: 教職員向けにAIの具体的な利用方法が紹介された。
  • 学生向けガイドライン: 学生向けの生成AIやChatGPTの利用ガイドラインが作成された。
  • 自らの考えの重要性: AIの利用に際しても、学生自身の考えや意見を大切にすることが強調された。

以上がまとめになります。

読んでいる皆さんにはあまりピンとこなかったかもしれませんが、自分でChatGPTを使いながら会話をしてみると、ぐっと理解が深まります。

ぜひ参考にして、まずは教育者自身がChatGPTを触ってみてください。

教育現場での具体的な活用事例:教育内容を相談する

せっかくなので、大学教育現場で使えような事例を1つ試してみました。

OpenAIの資料にもあった、「教育内容に助言をくれるアドバイザー」になってもらい、いろいろ相談してみました。

今回は、「大学生に教育心理学を教える」というシーンを想定して、会話をしています。楽しい。

こちらのリンクから御覧ください。

教育現場での具体的な活用事例:自己分析

もう一つ、「学生が使う」シーンとして、就職活動の自己分析の方法を紹介します。

就活のアドバイザーを召喚し、会話を繰り返すことで、自己分析レポートを得ることが可能です!

これ、自己分析にもなるし、面接練習にもなるし、超優秀なレポートが届くし、めちゃくちゃすすごいんですよね…

こちらのリンクから御覧ください。

中村の私見 「AIに頼ると思考力が下がる」

よく、「AIに頼ると、学生の思考力が下がるのでは?」と懸念する先生方がいらっしゃいます。

しかし、どうでしょうか?

1、AIを使うと、本当に思考力が下がるのでしょうか?

2、下がるとしたら、それは悪いことでしょうか?

この点を、一度きっちりと考えていくことが必要だと思います。

新しい技術に対する反発は、いつも時代も同じです。

「車」の誕生で、「足腰の強さ」は下がったかもしれません。

「電卓」の誕生で、「計算力」は下がったかもしれません。

しかし、それは悪いことでしょうか?

社会にとって「悪」でしょうか?

思考力というものの本質について、改めて考え直すフェーズになったのだと、私は考えています。

中村の私見 戦略的学習の重要性

オックスフォード大学のオズボーン准教授が、「2030年に必要なスキル第一位」に上げているスキルが、

戦略的学習力(ラーニングストラテジー、Learning Strategy)

です。

つまり、教師や学校が決めたカリキュラムを『受け身で学ぶ』のではなく、

学ぶ内容も、学ぶ方法も、自分で戦略的に選ぶ、『戦略的に学ぶ力』こそが、これからの時代に最も重要な力になるということです。

私は、生成AIの登場は、教育の在り方を根本から変えてしまうと考えています。

そんな時代だからこそ、学びの重要性、特に、戦略的学習という意味を、考えて欲しいと思います。

まとめ

本ブログでは、「大学教育で生成AIやChatGPTを活用するには?」というテーマで、資料を紹介し、私の私見もお伝えしました。

大学運営側、教師側としては、生成AIの登場により、戸惑っていることも多いかと思います。

しかし、恐れていてばかりでは進みません。

AI時代の到来を受け止めつつ、教師側も変化することが必要です。

まずは、ChatGPTをガンガン触ることから始めてみましょう!

以上、まとまりのないブログですみませんでした!(笑)