戦略的学習力(ラーニングストラテジー)とは?これからの時代に必要なスキル第1位
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これからの時代に必要なスキルって何だろう?第1位にある「戦略的学習」って何なの?
そんな疑問に答えます。
本記事では、いま注目の戦略的学習力(ラーニングストラテジー)について解説します。この言葉はまだまだ新しく解釈が分かれているので、私なりの意見や考え方をがっつり紹介していきます。
この記事は、世の中にもっと価値ある学びを届ける専門家、戦略的学習コンサルタントの中村が解説します。
詳細プロフィールはこちらへどうぞ。
戦略的学習力(ラーニングストラテジー)とは?
戦略的学習力(ラーニングストラテジー、Learning Strategy)という言葉を聞いたことがありますか?
あの「AIで仕事がなくなる!」という論文を発表した時の人、オックスフォード大学のオズボーン准教授が、「2030年に必要なスキル第一位」に上げているスキルなのです!
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では、戦略的学習力とは何なのでしょうか?
文献によると、
Selecting and using training/instructional methods and procedures appropriate for the situation when learning or teaching new things.
引用:O-NET Online
となっています。日本語に訳すと、
「新しいことを学んだり教えたりする時に、状況に応じた訓練(学習方法)や指導方法を選択または使用する力」となります。

・・・・・つまり、どういうことだってばよ?(笑)
このままだと少し分かりにくいですね。
この引用のままだと「教える側」と「学ぶ側」の両方の意味がごちゃまぜになっているので、「学ぶ型」の立場だけで考えると
「学び方を選ぶ力」となります。
すっきり!
・・・しかし、この定義だと私はちょっと納得できません(笑)
と言うのも、「学び方=どうやって学ぶか(How)」も確かに重要だけど、「学ぶこと=何を学ぶか(What)」もそれ以上に重要だと思うからです。
例えば、大学進学しようとしている高校生なら、

どの学部に進学しよう?経済学部?それとも工学部?
なんて悩んだりしますよね?この時に大事なのが、「何を学ぶか(=What)を選ぶ力」です。
ですから、私は「戦略的学習力」を次のように解釈しています。
戦略的学習力の定義
学び方や学ぶ内容を選ぶ力
う~ん、すっきり(笑)
それではここからは、「何を学ぶか(What)」と「どうやって学ぶか(How)」をさらに深堀していきましょう。
2030年 雇用に必要なスキル ベスト120
オズボーン教授が発表した「The future of skills employment in 2030」に記載されている、「雇用において2030年に必要になるスキルベスト120」を紹介します。
- 戦略的学習力
- 心理学
- 指導力
- 社会洞察力
- 社会学・人類学
- 教育学・訓練
- 協調性
- 独創性
- 発想力
- アクティブラーニング
- 心理療法・カウンセリング
- 哲学・神学
- 伝達力
- サービス志向
- アクティブリスニング
- 問題解決力
- 口頭表現力
- コミュニケーション・メディア
- 活舌
- 判断力・意志決定力
- 英語
- モニタリングスキル
- 演繹思考
- 口頭理解力
- クリティカルシンキング
- システム評価スキル
- 歴史・考古学
- 帰納的思考
- 説得力
- 音声認識
- 科学
- 交渉力
- 人事マネジメント力
- システム分析力
- 問題感度
- ライティング
- 運用分析スキル
- 管理力
- 生物学
- ファインアート
- 読解力(読み)
- 暗記力
- タイムマネジメント
- 外国語知識
- ライティング表現
- 医学・歯学
- テクノロジーデザインスキル
- 人事・人材開発
- 読解力(書き)
- 情報発注力
- タイムシェアリング力
- 地理
- 法・政府
- 顧客サービス
- カテゴリー柔軟性
- 撤退速度
- 資源管理
- 化学
- 公共安全とセキュリティ
- 電気通信
- コンピュータ・電子工学
- 経営資源管理
- 設計
- 閉鎖能力の柔軟性
- 物理学
- プログラミング
- 工学・技術
- 視覚化
- セールス・マーケティング
- 予見力
- 爆発力
- 建築・建設
- 選択的注意力
- 事務知識
- 聴覚注意力
- 経済学・会計
- 数学推論力
- 近見力
- 数学スキル
- 交通知識
- 数学知識
- 能力順位
- 動的殉難性
- 品質管理
- スタミナ
- 食品生産
- 体幹
- 身体調整力
- 平衡力
- 視覚色別力
- インストールスキル
- 動的筋力
- トラブルシューティング
- 範囲柔軟性
- 装備選択力
- 静的筋力
- 聴覚感度
- 機械知識
- 知覚速度
- 深度知覚
- 手足の移動速度
- 空間定位力
- 音像定位力
- マルチリム調整力
- 生産・処理力
- 運用監視スキル
- ナイトビジョン能力
- 周辺視野能力
- グレア感度
- 修理スキル
- 応答指向
- 機器メンテナンス
- 腕と手の安定性
- 反応時間
- 運用・制御力
- 指の器用さ
- 手先の器用さ
- レート制御
- 手首の速度
- コントロール精度
このランキングを見て、あなたは何を感じるでしょうか?
12位の「神学」は、私たち日本人にはなじみのないスキルですね。海外と日本では必要とするスキルがやっぱり違うのでしょうか?
117位の「手先の器用さ」はかなり低い順位ですが、美容師のような職業では必須です。職業によって身につけるべきスキルが違うのは当然なので、ランキングが低いからムダというわけではないみたいです。
「スタミナ」が85位と低いのはけっこう意外でした。このランキングは「雇用に必要なスキル」であって、「生きるために必要なスキル」ではないので少し注意が必要です。
もし「生きるために必要なスキル」というランキングを作れば、「お金に関する教養」などが上位にランクインしそうですね!
また、「やっぱりね!」と思ったのが、66位の「プログラミング」
最近は「プログラミングの勉強は絶対やった方が良い!」なんて言う人がいますが、プログラミングはいわゆる1つの「専門スキル」に過ぎません。ITエンジニアになるような人でなければ、プログラミングは別にそこまで重要なスキルではないのです。
そして74位の「事務知識」。低いですね~。
事務職と販売職の2つは、AI(人工知能)やブロックチェーンなどの「第4次産業革命」で真っ先に自動化される領域ですから、この低い位置にも納得です。
私が興味深かったのは、1位「戦略的学習力」、4位「社会洞察力」、6位「教育学・訓練」、10位「アクティブラーニング」と、ベスト10に学びに関する力が4つも入っていることです!
「社会洞察力」・・・社会の変化をよく見抜こう!
「アクティブラーニング」・・・受け身ではなく主体的(アクティブ)に学ぼう!
さすがオズボーン准教授!
いまはAIやグローバル化など変化が激しい時代ですから、変化に対応するための「学び」はますます重要になっているってことですね!
何を学ぶか?学びの4領域(キャリア・ライフ・ビジネス・リベラルアーツ)
でも、「何を学んでいいか分からない!」という人はきっと多いでしょう。
そんな時に役立つのが次の「学びの4領域」です!

これは、学びの領域を私なりに4つに分類した図になります。
私は、世の中にある学びは、「キャリア」「ライフ」「ビジネス」「リベラルアーツ」の4領域にざっくりと分類できると考えています。
1つずつ簡単に紹介しますね。
①キャリアの学び
- 自己理解・自己表現
- キャリアデザイン(職業選択・キャリアチェンジ・転職・起業・副業・ブランディング)
- 社会洞察(社会理解・職業理解・業界研究)
職業を何度も選択し、仕事の在り方が変わる時代ですから、自分のことを理解し、キャリアを自分で作るための学びはとても大切です。
例えば転職の時、自分や職業のことをよく理解できていなければ理想的な転職はできませんよね?それに、転職市場での自分の価値を高めるために、「ブランディング」を学ぶ重要度は昔の比ではありません。
また、公務員や会社員ではなく、副業・フリーランス・起業・独立という生き方を選ぶ人もさらに増えるでしょう。こうした会社に依存しない生き方を選ぶためには経済的に自立する力が必要で、キャリアデザインの重要性は極めて高いと言えます。
「社会洞察」の学びとは、社会の流れや業界の浮き沈みを知るための学びです。代表例が、大学生が就職活動でやる「業界研究」ですね。(こちらの記事でも紹介しています)社会を洞察するための学びは、ビジネスと密接に関わる領域です。
②ライフの学び
- ライフデザイン(生き方・人生設計)
- マネーリテラシー(お金の教養)
- ヘルスケア(健康・メンタルヘルス)
ライフの学びとは、幸せな人生を生きるために必要な生き方・お金・健康などに関わる領域の学びです。
学校教育では非常に軽視されがちですが、お金の扱いや心と体の健康について学ぶことは極めて重要ですよね?特に、学校では教えない「お金の教養」は、知っている人とそうでない人で人生に大きな差がつく領域です。この中でも、学ぶ価値が高い分野と言えるでしょう。
※お金の勉強をしたい人は「お金の勉強講座」へ
また、ライフデザインは自分の生き方や人生設計を考える分野です。「ライフキャリアデザイン」といって、キャリア(仕事や働き方)と密接に関わる分野です。
例えば、女性なら昔のような専業主婦ではなく、家庭と仕事の両立が重要な関心事だと思います。男性も、今までの時代のような「モーレツ」な働き方ではなく、プライベートや家庭を大切にしたワークライフバランスが欠かせない時代になりました。
③ビジネスの学び
- ヒューマンスキル(コミュニケーション・マナー・セールス・接客)
- テクニカルスキル(PCスキル・ビジネスライティング)
- 専門スキル(マーケティング・マネジメントなど)
- 思考法(クリティカルシンキング・ロジカルシンキング)
- 表現技術(プレゼンテーション・ライティング・デザイン・アート)
ビジネスの学びとは、実際に社会人として必要なビジネススキルの学びのことです。
中でも、全員に必須と言えるのが「ヒューマンスキル」と「テクニカルスキル」の2つです。社会人のビジネスマナーの基礎、基礎的なPCスキルやメールや文章作成力はほぼ全社会人に必須と言えるでしょう。
専門的スキルとは、マーケティングやマネジメント、プログラミングなどの技術的なものまで様々です。こうした専門スキルは、全ての人に必要というより、その職務につく人に必要なスキルです。
学校では「プログラミングが必修になる!」なんて言っていますが、正直全ての人に必要なスキルでもなんでもないですからね。
あとは思考法および表現法(アート)の分野です。この領域はこれまでの学校教育(リベラルアーツの領域)が苦手としてきた領域ですが、「アクティブ・ラーニング」が一般的になり、考えたり、自分の意見を表現する学びは学校でもかなり増えてきましたね。
④リベラルアーツ(一般教養)
- 人文科学(文学・哲学・歴史学・語学)
- 社会科学(法学・政治学・経済学・経営学)
- 自然科学(理学・医学・工学・農学)
- ITリテラシー
日本の学問は、大きく分けると文学・歴史学などの「人文科学」、法学や政治学などの「社会科学」、数学や理科などの「自然科学」の3領域に分かれています。

図で見ると分かりますが、心理学や地理学、教育学などは、3領域の複合分野に位置しています。このように、あくまで人が勝手に分類分けをしただけで、厳密に境界が決まっているものではありません。
また、日本ではいわゆる「文系」が人文科学と社会科学、「理系」が自然科学の領域を学びます。こちらも日本が勝手に決めているルールであって、文系だから理学の知識がいらないとか、理系だから政治学の知識がいらないというわけではありません。
実際に、日本では文系の「経済学部」や「心理学部」は、国際的には理系学部です(数学をたくさん使いますからね…)。このように、学問を無理に分類しようとするとひずみも生じるので、あまりこだわり過ぎなくても良いでしょう。
最後に、「ITリテラシー」はもはや全ての領域に関わる分野。生きていく(ライフ)ためには絶対に必須な学びと言って良いでしょう。
どうでしょうか?
こうして見ると、「あ、これ学んでみたい」とか、「ビジネスの領域の学びって学校では教わらないよな~、じゃあ自分で勉強しないと」・・・なんてことに気付くはずです。
もちろんこの図は私が勝手に作成した図なので完璧ではありませんが、何かのヒントにはなると思います。
ぜひ活用してみてくださいね。
戦略的学習の具体例
それでは、戦略的学習の具体例を2つみていきましょう。
①歯医者さんがWEBマーケティング?
私の知り合いで、戦略的学習の大切さを身をもって教えてくれた歯医者さんがいました。
この歯医者さん、超売れっ子。
彼が言っていた言葉なのですが、「歯医者が本当に学ぶべきは『Webマーケティング』だ!」とはっきり言っていました。

え?なんで歯医者さんが「うぇぶまーけてぃんぐ???」を学ばないといけないの?
(※Webマーケティングとは、ネット上で集客する方法のことです)
歯医者が学ぶべきことは「歯の治療の知識じゃないの?」って思った人は、ちょっとやばいです。
もちろん、歯医者にとって治療スキルは大前提。しかし、実際に仕事を始めて店舗を持つと、差がつくのは「集客力」です。
「歯医者はコンビニより店舗数が多い」ことは有名ですよね。つまり、他の歯医者と激しい集客争いをしているのです(特に都会では)。
しかし、「腕がいい」だけでは人が集まってきません。だって、腕がいいかどうかなんて、実際に治療を受けてみないと分からないからです。でも、歯医者の腕を比べるために歯医者を転々とするなんて現実的じゃないですよね・・・
実はその時に差がつくのは、「HPで検索されるか」「Webサイトが見やすいか」というネット上での見え方なんです。
つまり、必要なのは、集客のスキル。
特に今は、歯医者を「ネットで検索する時代」ですから、ネット上のマーケティングである「Webマーケティング」の知識は必須。ネット上の検索エンジンやグーグルマップに自分の店舗が検索されないと終わりです。
HPを開くなら「HP作成技術」、文章を書くなら「ライティングスキル」、動画で発信するなら「動画作成スキル」「ウェブデザイン」などの知識が有効です。
どうでしょうか?このように考えると、歯医者を目指す人がWebマーケティングを学ぶことはもう「当たり前」なんです。
歯医者さんでHP作成やマーケティングができる人はほとんどいませんので、ちょっと学んだだけでめちゃめちゃ差がつけられるのです!こんなに学びの価値があるのに、学ばないなんてもったいないと思いませんか?
②保育士さんが中国語?
私は保育士・幼稚園教諭養成の大学で働いていたので詳しいのですが、最近は中国人や外国人のお子さんが急増しているようですね。
コロナウイルスで外国人は減ってしまいましたが、グローバル化の進むこの時代、日本の保育園内に、外国人のお子さんがいるのは全然珍しくありません。
ですから、将来的には、英語や中国語が話せる保育士は価値があがるかも…なんて状況が生まれているのです。
いまは「保育士不足」で保育士の就職は大変恵まれていますが、少子化が進めばどんどん保育園が潰れていくかもしれません。
ですから、今から「レアな保育士になる」ための知識やスキルを身につけておくことはとても大切。
英語や中国語、HP作成やマーケティング、あるいは経営者としての知識を身につけるのも良いでしょう。
この歯医者や保育士さんの例のように、「戦略的に学ぶこと」は極めて重要。
これが「戦略的学習力(ラーニングストラテジー)」です。
どうやって学ぶか?(How)
最後に、学び方についても簡単に触れておきます。
今の時代は「学び方=どうやって学ぶか」は大きく変わろうとしています。
昔なら、「学校で」「先生から」学ぶのが基本でしたが、今はインターネットで簡単に情報を得ることができます。
もちろんネットには間違った情報も多いですし、人から直接教えてもらうよりは学習効果が低いかもしれません。しかし、選択肢が増えたのは事実です。
2020年の新型コロナウイルス後は、リモートでのセミナーや勉強会も急激に増え、遠隔でコミュニケーションを取りながら学ぶこともかなり当たり前になりました。
- 学校で学ぶ
- リモートで学ぶ
- 本を読む
- ネットで調べる
- YouTubeなどの動画を見る
- セミナーや勉強会に参加する
- とにかくやってみる
- 人の手法を真似る
- 人に聞く
現代では、こうした様々な方法を上手く活用して学ぶことが有効です。
学校教育のように、古い時代の人々が作ったカリキュラムに従う「CBL(カリキュラム・ベースド・ラーニング)」だけでなく、
現場の課題を解決しながら学ぶ「PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)」をもっと取り入れるべきです。
これからの時代は、こうした様々な学びの手法を取り入れる「学びのベストミックス」が重要です。
実際に公教育でも大きく変革が起きようとしていますね。くわしくは次の記事をご覧ください。
まとめ
本記事では、戦略的学習力(ラーニングストラテジー)について解説しました。
まとめ
- 戦略的学習力とは、オズボーン准教授が「2030年に必要なスキル第一位」に上げているスキルである
- 戦略的学習力とは、「学び方や学ぶ内容を選ぶ力」のことである
- オズボーン研究から、「学びに関する重要性はますます高まっている」ことが分かる
- 学びは、「キャリア」「ライフ」「ビジネス」「リベラルアーツ」の4領域に大きく分類できる
- 具体例 ①歯医者×Webマーケティング
- 具体例 ②保育士×中国語
- これからは、様々な学び方を組み合わせる「学びのベストミックス」が重要
「戦略的学習に興味がある!」という人はきっと私のプロフィールや事業に共感をもってもらえると思います。
ぜひHPを覗いてみてくださいね。
それではありがとうございました!