高校でお金の勉強?家庭科で投資の授業がスタート

2022年度から始まる高校の「新学習指導要領」において、
「投資の勉強が高校の家庭科で始まる!?」というニュースが話題になりました。
このニュースを見て、

なんで家庭科なの?

投資の勉強ってどのくらい教えるの?
なんて疑問を持った方も多いと思います。
本記事では、これらの疑問について解説していきます。
国はお金の勉強を進めたい
「お金の勉強は大切なことだから、学校でもしっかり教えて欲しい」と思う人も多いと思います。
実は、国も「なんとかしてお金の教養を身につけさせたい」と思っているのです。
というのも、「年金2000万円問題」で話題になったように、国の財政だけでは国民の生活を守ることが難しく、国民1人1人にお金の準備をして欲しいのです。
その証拠として、国はiDeCO(確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)など、税金が有利になる制度を用意しています。
これは、「老後のお金を自分で貯めてくれれば、税金を安くするよ」「投資をしてくれれば、税金を安くするよ」という制度。国はなんとかして、投資や資産形成を進めて欲しいんですね。
しかし、実際に投資の経験がある人は国民の約2割。8割が未経験です。
ですから、「投資や資産形成がもっと身近になるように、今回の学習指導要領から投資の勉強を始めよう!」となったんですね。
なんで家庭科なの?
「お金の勉強をなんで家庭科で教えるの?」と思った人も多いでしょう。
お金の知識と言えば、どちらかと言えば「経済学」「経営学」「商学」なんかをイメージする人が多いですよね?
しかし、経済学は「世界経済」や「日本経済」など、かなり大きなお金の動きを学ぶ学問。経営学や商学は、「簿記」に代表されるように「会社のお金」を扱う学問分野です。
しかし、「老後の資産形成をしよう」という学びは、国や会社ではなく個人や家庭レベルのお話。経済学や経営学とは、学びの目的が違います。
「個人のお金や家計」など、私たちの身近な生活を考える学問と言えば・・・そう、「家庭科」ですよね?
こちらの学問マップをごらんください。

学校や大学で教えている学問領域は、大きく分けると「人文科学」「社会科学」「自然科学」の3領域に分かれます。
今回注目する「家政学」は、これら3領域の融合領域です。
例えば、家庭科で学ぶ「衣食住」は日本の「歴史」に関係しますし、「食や栄養」は農業や医学と、「消費やお金」は経済や政治と密接な関係があります。
ですから、家庭科って実はかなり範囲が広い学問なんですね。
家庭科の中には、「消費や契約」や「リスクや保険」や「ライフスタイルやお金」という分野があるので、「投資の勉強を教えるなら家庭科だろう」と考えたわけです。
新学習指導要領を見てみよう
さて、ウワサになった、2022年度から新しくなる高校家庭科の「新学習指導要領」を見てみましょう。
家計管理については , 収支バランスの重要性とともに,リスク管理も踏まえた家計管理の基本について理解できるようにする。その際,生涯を見通した経済計画を立てるには,教育資金,住宅取得,老後の備えの他にも,事故や病気,失業などリスクへの対応が必要であることを取り上げ,預貯金,民間保険,株式,債券,投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット,デメリット),資産形成の視点にも触れるようにする。
文部科学省 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
おぉ、確かに、「株式」「債券」「投資信託」について教えるとなっていますね。
ただし、これは膨大な学習指導要領のほんの1部。
ですから、実際の授業では「触れる程度」の知識しか扱わないでしょう。
家庭科で扱うお金の話は、他にも
- 「契約書」はよく確認してからサインしよう
- 「クーリングオフ」という制度で契約を取り消すことができるよ
- 「キャッチセールス」などに気を付けよう
- 「ネットショップ」にも詐欺がある
- 「リボ払い」に気を付けよう
- 「一生に必要なお金」
- 「保険」って何
といった内容があります。確かに投資や資産形成の話も加わりますが、どちらかと言えば「消費者教育」が中心ですね。契約の重要性や消費者の権利と責任などについて学習し,自立した消費者として行動する力を育みます。
ですから、「学校で投資の勉強が始まる」というのは、正直期待するほどのものではないでしょう・・・
個人的にはもっとがっつりと教える内容かな?と思いますので、ちょっと残念ですね。
まとめ
結論
- 2022年から、高校家庭科で投資の勉強がスタートする
- 国はお金の勉強を進めたい
- 個人のお金は「家庭科(家政学)」に分類される
- 家庭科は「消費者教育」が中心で、実際は「投資」についてそこまで深くは教えない