公務員が安定とは言い切れない8つの理由(目指す前に見よう!)

公務員が安定とは言い切れない7つの理由

公務員と言えばとにかく「安定」ってイメージがあるけど、公務員の将来は本当に安定なのかな?

なんて疑問に答えます。

これから公務員を目指そうと考えている人にオススメ!

本記事では、「公務員が安定とは言い切れない8つの理由」を紹介します。

この記事を書いている私は、

  • 自分自身が元公務員(県立高校の教諭)
  • 高校教師→大学職員として多くの若者の就職を支援
  • 大学で「公務員養成講座」の業務経験がある
  • 国家資格キャリアコンサルタント
  • 進路アドバイザー

こんな私が、解説していきます。

はじめに 公務員は確かに魅力的

大前提として、公務員になること自体は決して悪い選択ではありません。

公務員には、以下のような魅力がたくさんあるからです。

公務員の魅力

  1. 身分が保障されており、クビになることはほとんどない
  2. そこそこ高い、安定した収入やボーナスがもらえる
  3. 年功序列で自動的に給料アップ
  4. 福利厚生がめちゃくちゃ手厚い
  5. 社会に貢献できる
  6. 社会的信用度が高い

このように、数多くのメリットがありますね。

公務員は国や地方公共団体に所属して働いていることから、民間企業と比べても圧倒的に身分が保障されていることは間違いないでしょう。

給料もそこそこ高く、国が公表している資料によると、公務員の年収は約640万円です!(出展:総務省「平成31年地方公務員給与の実態」より 地方公務員、一般行政職の場合)

民間企業の平均年収が430万円ですから、収入面でもとても魅力的と言えますね。

(※ただし、若いうちは意外と給料が低いことには注意が必要です。大卒初任給は約330万円。「がっつり稼ぎたい人」からすると、物足りないかもしれません)

また、女性目線でみると、公務員の給料の高さは魅力的です。民間企業で働く女性の平均年収は約290万円ですから、女性だけで見ればかなり収入が高いと言っていいでしょう。

さらに、産休・育休の手厚さも民間とはケタ違い。育児休暇はなんと3年間です!ですから、多くの女性にとって、公務員は魅力的な職業だと言って間違いないでしょう。

また、社会的信用度が高いことから、親も安心ですし、婚活でも異性から大人気でしょう(笑)

さて、ここまで聞くと公務員がとても魅力的な職業のように思えるかもしれません。

しかし、こうした公務員の魅力や安定性は、将来的にかなり悪くなっていくと予想されます。ではここからは、公務員が安定とは言い切れない理由について考えていきましょう。

※ここは注意 ~公務員にはたくさんの種類がある!

  • 国家公務員(総合職・一般職・専門職がある)
  • 地方公務員
  • 行政系(市役所などの行政職)
  • 心理系(厚生労働省・裁判官・相談員)
  • 福祉系(介護士・ケースワーカー・社会福祉士・児童相談員)
  • 技術系(土木・建築など)
  • 公安職(警察・消防・皇居護衛官)
  • 資格免許系(教師・看護師・保育士・栄養士など) などなど!

このように、公務員といってもたくさんの種類がありますので、公務員のメリット・デメリットを考える時はそれぞれのケースによって調べてみると良いですね。

理由① 給料が下がる

公務員が安定とは言い切れない1つ目の理由は、将来的に給料が下がることです。

公務員のメリットを「年功序列で給料が自動で上がること」と考えている人は要注意です!

公務員の給料は税金から支払われ、

税金は人口に依存します。

日本ではこれから40年の間に、労働人口が40%程度減ることがほぼ確定しています。

40%って・・・やばいですよね?

単純に考えて、今ある行政サービスの40%をカットしないといけないわけです。

給料だって当然下がります。

こうなってくると、今のように年功序列で給料が高くなるというのは考えにくいですね。

「将来は給料が高くなるぞ!」と期待してても、フタを開けてみたら給料が全然上がらなかった…なんて未来が待ってるかもしれないんです。

こうした厳しい未来は、都会よりも地方で深刻です。

2007年に北海道の夕張市が財政破綻になりました。少子化が進めば、財政破綻する自治体はますます増えていくでしょう。

こうなっても、公務員の待遇って保障されると思いますか?

地方の自治体で公務員を目指す人は、その給料がどこから出てるかをよく考えてみましょう。

理由② 仕事を簡単に減らせない

公務員が安定とは言い切れない2つ目の理由は、仕事を簡単に減らせないこと。

これは、民間と違う公務員の大きな弱点なんです。

というのも、公務員は「公共の福祉のため」に働いています。

公共の福祉・・・「利益(お金)」ではなく「みんなのために」働くってことね!

民間企業のように「利益(お金もうけ)」を優先して働くわけではなく、国民や地域住民の生活を守ることが求められます。

ですから、「どう考えても赤字なのに仕事を辞められない」という、民間企業だったら地獄みたいな状況(苦笑)が公務員では生まれるわけです。

例えば、「ほとんど利用者がいない、田舎のバス」とかがいい例ですね。

どう考えても赤字なのに、地元住民の反対にあってやめるにやめられない・・・・こうなってくると、赤字に赤字が重なって、労働環境や待遇はもっともっと悪くなっていきます。

例え赤字になっても、例えどんなに忙しくても、仕事が減らせないんです。こうして、職場や部署によっては、地獄みたいな労働環境が出来上がるわけです。

理由③ 労働環境のブラック化

公務員が安定とは言い切れない3つ目の理由は、労働環境のブラック化です。

先ほどの話の続きですが、税金(予算)が減って、仕事が減らせないとなれば、労働環境がブラック化していくのは当たり前です。

現時点でも、一部の職場や、一部の部署では非常にブラックな労働環境が生まれています。

その代表例が学校です。

「日本の先生は世界一忙しい」と言われるように、授業や行事、生徒指導から保護者対応、放課後や休日の部活動など、本当に多くの仕事をしています。

私自身も元高校教師で、運動部の顧問をしていた時は、サービス残業は月200時間、最高で90日連勤という、労働基準法ガン無視のとんでもない状況でした。

こうした民間ではありえないことが、学校現場では当たり前のように起きています。

公務員には労働基準法は当てはまらないので、将来的にはこうしたブラック環境がもっと増えてもおかしくありません。

理由④ 待遇のブラック化

公務員が安定とは言い切れない4つ目の理由は、待遇のブラック化です。

実はこれ、すでに大きな社会問題になっています。

みなさんは「官製ワーキングプア」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?

なんと、地方自治体の職員の3人に1人、正規ではなく非正規の職員なのです。

公務員と言えば、「雇用が安定している」というイメージがあるかもしれませんが、近年は急激に非正規雇用者が増えています。

当然、雇用は全然安定していませんし、給料は低い。

非常勤職員の給料は時給で約900円月収は13~14万程度と言われます。

これじゃあ学生のアルバイトと同じレベルじゃん…

「働いても働いても貧乏」なワーキングプア・・これを国が大量に生み出しているのが今の現実なんです。

非正規雇用者については、国もさすがに「これはやばい」ということで、「同一労働・同一賃金」を掲げて改善しようとしています。しかし、税収が悪化する中で、公務員全体の待遇や給料が上がることはないでしょう。

国の政策で「非正規」という言葉自体は無くなるかもしれませんが、非正規雇用者の待遇が劇的に改善されるのは考えにくいのです。

また、非正規が増えるということは、正規職員の負担が大きくなるということです。

世の中には、「資格や免許がないとできない」とか「正規採用者じゃないとやっちゃいけない」仕事ってたくさんありますよね?

お役所の世界にはこうしたルールがたくさんあるので、正規職員の負担がどんどん大きくなっているんです。

その例が「災害」で、2019年の台風災害の時には、「死ぬほど忙しい正規職員」が大きな話題になりました。2020年の「新型コロナウイルス」でも、行政サービスの対応のために、疲弊した職員が話題になりました。

将来は、「死ぬほど忙しい正規職員」と、「働いても働いても貧乏で不安定な非正規職員」であふれかえるでしょう。

これはなかなか厳しい現実ですね・・・。

理由⑤ イノベーションが起きない

公務員が安定とは言い切れない5つ目の理由は、イノベーションが起きないことです。

私が公務員をやめた理由がこれで、人によってはこれが最大の理由になるかもしれません。

民間企業と違って、「何かを変える」とか、「イノベーション(変革)を起こす」という仕組みがないんです。

中には「現場を変えよう!」と行動する人もたくさんいるのですが、何かをするには「たくさんの上司のハンコ(許可)」がないと提案が通りません。

ほとんどの上司は「できるだけリスクを取りたくない」「できるだけ今までのやり方を変えたくない」と思っているので、誰かが頑張って何かを変えようと思っても、リスクをとってチャレンジしてくれるケースはほとんどありません。

でも、これはその上司が無能というわけじゃないんです。

私の経験上、管理職などの高い役職につく人は人格者が多いですし、基本的には優秀な人ばかり。

だけど、公務員ってめちゃくちゃクレームに弱いんです。

何かミスがあったらすぐに叩かれるので、とにかくミスが起こらないことが最優先。だから、新しいことに挑戦することができず、いつまでたっても変わらないんです。

また、ITに関する理解のなさは絶望的(涙)

例えば、「データ(Excelなど)はクラウドで共有しましょう」という提案をしても、

え?クラウドって何?そもそもExcelとか使えないし、紙でいいじゃん。めんどくさいなぁ。

・・・なんて言われて、話が全然前に進まないのです。

公務員で働く人の中には、こうした変化が起きない、時代遅れの環境で働くことに耐えられない人もいます(私のように)

だから、「変化を起こそう」とする優秀な人ほど辞めていき、変えることを諦めた人たちが現場に残ります。

こうした環境が、本当に安定なのでしょうか?

理由⑥ 配置換え・出向・希望退職が増える

公務員が安定とは言い切れない6つ目の理由は、配置換え・出向・希望退職(クビ)が増えることです。

まず、「公務員はクビにならない」と勘違いしている人がいますが、そんな法律はありません。公務員をクビにすることは全然できます。

将来的に財政が厳しくなれば、民間のようにリストラされる可能性も十分に考えられます。もちろん「リストラ」ではイメージが悪いので、「希望退職者はいませんか?」という形で。

将来的には、40歳や50歳で退職することが普通になるかもしれません。

ただし、リストラはやっぱり最終手段。それよりも、新卒採用のストップや、配置換えや出向になる可能性の方が現実的でしょう。

配置換えとは、具体的には「介護施設」などがイメージしやすいでしょうか?

10年~30年後には、AIやブロックチェーンなどの技術で行政業務が大幅に改善される可能性があります。そうなると、「市役所は人が余っているから、人が足りない介護施設に移そう」なんてことは当たり前に起きると考えられます。

あるいは、郵便局のように、一部の業務が「民営化」される可能性があります。

こうなってくると、安泰とは程遠い、厳しい未来になるかもしれません。

理由⑦ 雇用保険がない

公務員が安定とは言い切れない7つ目の理由は、雇用保険がないことです。

雇用保険とは、名前の通り従業員の雇用を守る社会保険制度の1つで、「失業」の時に失業した人を守る保険のことです。

しかし、公務員にはそもそも「会社がつぶれる」とか「クビになる」という概念がないので、雇用保険が存在しません。

誤解のないように言っておくと、公務員がなんらかの事情で失業・求職しても、公務員ならではの手厚い制度があるので、この点は心配する必要はありません。

しかし問題なのは、雇用保険にある「教育訓練給付」の制度が使えないこと!これがかなりでかいんです!

これは、「資格取得や職業訓練を受けると、最大で70%(最大56万円)の補助金がもらえるよ」という制度のこと。

例えば、「国家資格キャリアコンサルタント」の養成講座は約37万円の受講料がかかるのですが、このうち70%の26万円は支給されるので、実質負担額は11万円でOKです。

しかし公務員の場合は37万円全額負担です。私の場合がこれでした・・・

11万なら支払えても、37万円となると手が出ない人も多いのではないでしょうか?ですから、公務員の場合、どうしてもスキルアップのための資格取得をためらってしまいます。

少し乱暴な言い方をすれば、「公務員は職業訓練(スキルアップ)なんてしなくていいよ」という国の制度設計になっているということ。

スキルが身につかない環境にいるというのは、大きなデメリットであると言ってよいでしょう。

理由⑧ 転職時に評価されない

公務員が安定とは言い切れない8つ目の理由は、転職時に評価されないことです。

個人的には、これが最大のデメリットだと感じています。

よく「公務員は潰しがきかない」と言います。

私自身、公務員から民間へ転職したのでよく分かるのですが、公務員としての業務経験は、民間企業ではほとんど評価されません。

なので、公務員の転職は正直厳しいです。

20代ならまだしも、30代40代で、給料が上がる転職はかなり難しいでしょう。

今の時代は「転職が当たり前」の時代です。途中でやめたくなるかもしれません。仕事を続けたくても、続けられなくなるかもしれません。

そして「人生100年時代」。働く時間が長くなったので、引退まで何もなく過ごせる人なんてほとんどいません。

ですから、潰しがきかない、転職ができない環境を選ぶことはリスクでしかありません。

「安定」には実は2種類あって、

  1. 身分の安定」・・・身分や待遇が組織によって保障されていること
  2. 個人の安定」・・・社会で必要とされるスキルや経験が身についていること(=市場価値が高いこと)

このうち、身分の安定は辞めたら消えてなくなります。

公務員でいるうちは確かに安定かもしれませんが、辞めたとたんに何の市場価値のない不安定な人材になる可能性が高くなります。

例えどんなに仕事が嫌でも、どんなに職場の人間関係が悪くても、辞めることが難しくなります。

そうなると、仕事にしがみつく自由度の低い人生になってしまいます。

あなたは、

「クビになりにくい公務員」を「安定」と見ますか?

「潰しがきかない公務員」を「危険」と見ますか?

ここはぜひ考えてみましょう。

公務員になるか迷ったら読む本 2冊

最後におまけで、公務員になるか迷ったら読んで欲しい本を2冊紹介します。

公務員になるか迷ったら読む本 1マーケット感覚を身につけよう 2グッバイ公務員

1冊目は「マーケット感覚を身につけよう」という、社会派ブロガーちきりんさんの本。この本を読むと「公務員こそ安定ではない」ことがよく分かるので、めちゃくちゃオススメです。

2冊目は「グッバイ公務員」という本。実際に公務員を辞めたHARUさんのお話で、公務員を目指すか迷っている若者にオススメ。

ぜひ読んでみてください。

まとめ

本記事では、公務員が安定とは言い切れない8つの理由について解説しました。

結論

  • 理由① 給料が下がる
  • 理由② 仕事を簡単に減らせない
  • 理由③ 労働環境のブラック化
  • 理由④ 待遇のブラック化
  • 理由⑤ イノベーションが起きない
  • 理由⑥ 配置換え・出向・希望退職が増える
  • 理由⑦ 雇用保険がない
  • 理由⑧ 転職時に評価されない

「公務員はとにかく安定だ!」と思っている人がいたら、それは大きな間違いです。

公務員はたしかに魅力的な職業。

ですが、理由⑦で解説した通り、「転職時に評価されず、キャリアチェンジに対応しにくい」職業なのは間違いありません。

よく考えて選択してみてくださいね。