学際的な学びって何?「戦略的学習」時代へ

教育の世界では、「学際(がくさい)」という言葉をよく耳にするようになりました。
この記事では、
- 学際とは何か?
- 学際のメリットとは?
- なんで学際が注目されているの?
なんてことを解説していきますね!
学際とは?
「がくさいって・・・学園祭のこと!?」
なんて思った人も多いと思いますが(笑)、ここで言う「がくさい」とは学園祭とは別物。
漢字で書くと「学際」です。
ちょっと聞きなれない言葉かと思いますが、学際とはいくつかの異なる学問領域を混ぜたものを指します。
学際(interdisciplinary)とは、研究などがいくつかの異なる学問分野にまたがって関わる様子(Wikipediaより)
別に特別新しい考え方ではなく、高校で言うところの「総合高校」のようなものです。
近年では、「学際系」の大学やコースは珍しくなく、東京大学・京都大学・早稲田大学を始めとして、多くの大学で注目を集めている分野になります。
これまでの学部選びは、 自分の将来の仕事や学びたい学問から進学先を選ぶことが一般的でした。
例えば、
- 医者になりたい→医学部へ行く
- 保育士になりたい→保育学部へ行く
- 経済学を学びたい→経済学部へ行く
図にするとこんな感じ。

日本の学問領域は大きく「人文科学」「社会科学」「自然科学」の3領域に分かれており、「法学」や「工学」といったように、多くの学生は自分の専門分野を選ぶのが普通です。
でも、ちょっと考えてください。
自分の専門分野以外が学べないって、つまらなくないですか?
「工学部に行ったけど法律も勉強したい!」とか、
「文学部に行ったけど商学も学びたい!」なんて人は絶対いるはず。
自分の専門分野以外のことだって、絶対役に立つはずです。
そこで最近主流になってきたのが、「分野を超えて学ぼう」という考え方。それが「学際系」の領域です。
この図で言うと、ど真ん中に位置します。
学際系は、このような学問領域のカベを超え、幅広い内容を学ぶものだと思ってくれればOKです。
学際系のメリット
学際系のメリットは、「とにかく幅広く学べること!」
昔に比べて、今は変化の激しい現代ですから、1つの職業や学問分野を決めるのは難しいもの。
17歳・18歳の高校生の中には、
- 何を学んでいいか分からない
- どんな進路を選べばいいか分からない
- 可能性を広げるために、分野を固定せずに幅広く学びたい
なんて高校生はたくさんいるんです。
ですから、変化が激しく、先の見えない現代において、幅広く学べる学際系学科は、時代に合った魅力的な学科と言えるのかもしれません。
社会の様々な課題に対応するためには、いろんな分野の知識が必要です。
例えば、「地域の農業を活性させる」という課題を解決するためには、農業の専門家、経済の専門家、法律の専門家、情報技術の専門家など、様々な知識が必要になりますよね。
また、2020年の「新型コロナウイルス感染症」を思い出してください。感染症が急増する中、「とにかく自粛だ!」と叫ぶ医療の専門家と、「経済を回さないとやばい!」という経済の専門家の意見が、真っ向からぶつかっていましたよね。
コロナウイルス対策で何が正しいかは私には分かりませんが、私には専門家たちが「自分たちの意見を主張すること」ばかりしているように見えました。
そうではなく、「相手の主張も尊重する姿勢」が必要じゃないかなと思います。そして、相手の主張を理解するには、相手の専門領域に対して、やはり最低限の知識は必要です。知識がなければ、そもそも相手を理解するのが難しいですからね。
つまり、現代では専門的な知識・スキルを持つと同時に、幅広い分野の知識を持った人材が必要だということです。
いわゆる、「T型人材」というやつですね。
ある領域は専門家(エキスパート)として極めつつ、それ以外の分野も広く浅く教養を持っておくという人材です。
以上のような時代背景から、学際的な学びは時代に合っていると言えますし、これからもっと発展していくでしょう。
これから高校を志望する中学生や、大学を志望する高校生の中には、総合学科・学際系学科を選ぶ人もたくさんいるんでしょうね。
ただ、ちょっと注意が必要です。
幅広く学べるということは、悪く言えば「尖っていない」「中途半端になりやすい」ということです。
これは実際に問題になっていて、高校の総合学科の評判はあまり良くはありません。
「個人の興味関心に応じて幅広く学べるよ!」なんて言われると「それいいじゃん!」って思うかもしれませんが、実際には、
- 入学してすぐに専門コースに分かれるので、結局幅広く学べない
- 工業・農業などの専門高校と比べて、施設が乏しい
- 学びが中途半端で、専門性が身に着かない
- 学力順でコースが決まるので、希望のコースに行けない
- 「好きな友達や先生がいるから」という不純な理由で決めるケースも多い
- どうしても「人気コース」と「不人気コース」ができる
など、現実の総合高校にはなかなか闇があります。
大学はこの限りではありませんが、「なんでも学べる学際系=中途半端になりがち」という実態もありそうなので、
もし進路を考えている場合は、このあたりの内情をしっかり見ることをおススメします。中にはめっちゃ頑張ってる学科もあるはずですからね!
学びの変化 戦略的学習の時代へ
さて、学際系という新しい学科が登場したように、学びの在り方は急速に変化しています。
なぜなら、学校教育で教えている学問と、実際の社会で必要とされる能力の溝が、どんどん大きくなっているからです。
こちらの記事で解説していますが、歯医者が成功するために必要な学問は、実は「歯学」だけでなく「マーケティング」なのです。
これまでの成功者は「腕の良い歯医者さん」でした。
しかし、これからの時代で成功するのは明らかに「マーケティングができる歯医者さん」です。
では、歯学部に進学したらマーケティングを学ぶことができるでしょうか?
答えはNOです。
マーケティングは、学問領域で言うところの「社会科学系→経済学・商学」の領域です。「自然科学系→医学系→歯学」の領域に進んだ大学生が、学内で学ぶチャンスはほとんどないでしょう。
ですから、学際系のように、複合領域を学べる大学に人気が集まるのも理解できます。
これからの時代は、学びの重要性に気付き、自ら学べる人が勝つ時代になっているのです。

「集客ができる歯医者」を目指したい!
大学で歯学を学んで、独学やオンライン講座でマーケティングを学ぼう!
こういう考え方ができる人とそうでない人で、圧倒的な差がつくでしょう。
このように、「何をどう戦略的に学ぶか?」を考える力を「戦略的学習(ラーニングストラテジー)」と呼びます。
自分が何を学ぶべきか、一度考えてみると良いでしょう。
まとめ
まとめ
- 学際とは「異なる学問領域を混ぜたもの」
- 学際系のメリットは、「幅広く学べること」 これは時代に合ってる
- 実際の総合高校や学際系大学には闇もあるので注意
- 戦略的学習が必要な時代になった
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。