「得意」で職を選ぶな?マッチング理論は役立たず!?【特性因子理論】

本記事は、得意かどうかで仕事を選ぶな!人と職のマッチング理論「特性因子理論」は実際にはほぼ役に立たないというお話です。

えぇ!?得意な仕事を選んじゃいけないの???って思うかもしれません。

しかし、実は近年になって、得意な仕事を選ぶという考えが誤りであったことが明らかになってきたのです。

以下の2つの記事の続きです。

本記事では、様々な根拠から客観的に分析をします。

人と職のマッチング理論とは

「マッチング」と聞くと、恋愛の話?出会い系?と思う人がいるかもしれませんが、ここでは「人と職のマッチング」を話します。

簡単に言えば、「できるだけ好きで得意な相性の良い仕事を選びましょう!」という理論で、専門的には「特性因子理論」と呼ばれます。

小学生でも理解できるほど簡単で、厚生労働省・企業・学校教育など、日本中で広く用いられている方法です。

フランク・パーソンズが1909年に提唱。職業選択には適材適所が重要で、「丸いクギは丸い穴へ」という言葉を残しています。

確かに、ここまで聞くと「うんうん、自分に合った仕事を選ぶって大事だよね!」って誰でも思いそうですよね……。

ホランドの六角形モデル

その後、カウンセラーのジョン・L・ホランドが個人と職業のマッチングをはかる六角形モデル(RIASEC)を開発しました。

ホランドは人の特性(パーソナリティ)と職業を次の6つに分け、できるだけ相性の良い職を選ぶべきと述べているのです。

ホランドの理論(ゴミ理論です)
  • R:現実的 (Realistic)
  • I:研究的 (Investigative)
  • A:芸術的 (Artistic)
  • S:社会的 (Social)
  • E:企業的 (Enterprising)
  • C:慣習的 (Conventional)

・・・人や職業が6つのタイプに分かれる・・・本当に?だんだん胡散臭くなってきました(笑)

これが様々な適性診断テストに進化し、現在も世界中の至るところで用いられているわけです。

役立たずの根拠

では、ここからは役立たずの根拠を示します。

特性因子理論の欠点

実はこの理論、提唱された当時からずっと欠点を指摘され続けています。

  1. 適材適所にこだわり過ぎ
  2. 人と職との関係はそんなに単純ではない
  3. 現実の職業選択はそんなに上手くいかない

100年以上経った今でも、この欠点を覆すことはできていないんです。

そして、多くの理論家(例えば統合的ライフプランニングを提唱したハンセンなど)が特性因子理論の活用に警鐘を鳴らしているんです。

ホランドモデルは根拠がない(証明済み)

なんと、ホランドの六角形モデルは、カウンセラーであるホランドが思いついたものなんです。私も初めて聞いた時は「マジかよ」って思いました(笑)

「科学的な根拠に基づく」とか「統計調査の結果」とかじゃないんです。なんと、六角形モデルが正しいことを裏付ける根拠って初めから全くないんですよ。

確かに冷静になって考えると、人や職業を6つのタイプに分けるってそもそも無理がありますよね。

そしてこれが2011年に発表されたダメ押しの研究結果。

参考文献:Are you interested? A meta-analysis of relations between vocational interests and employee performance and turnover.

ホランドの六角形モデルは、仕事のパフォーマンスや離職率に全く関係がないという結果が得られました。

お疲れ様でした(笑)

適職を選ぶ難しさ

こちらの研究では「自分に合った職を事前に見抜くことは難しい」という結論が得られました。

参考文献:The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology

実際にその職場で働いてみて「自分に合っていた」と後から感じるのは問題ありません。問題なのは「働く前に」合っているかどうかを判断することは難しいという厳しい現実です。

馬には乗ってみよ、人には添うてみよ※」とはよく言ったものですね。

(※馬の良し悪しは乗ってみなければ分からず、人柄の良し悪しは付き合ってみなければ分からない。何事も経験してみないと分からないという事です。)

さらに、こちらの研究では「『強み』と仕事の『満足度』の関係は弱い」という結論が述べられています。

参考文献:Strengths of Character and Work

う~ん、自分の得意・強みを活かすことができる「適職」を選ぶことって、あんまり現実的な話ではないんですね。

考えてみれば、人の特性や仕事内容は、診断テストで分析できるほど単純ではなく、いくつもの変数が複雑に重なりあってできるものです。

また、人の価値観や仕事の内容だって、時間や環境の変化によって刻一刻と変化しますからね。

以上、様々な根拠から、この理論が実際には「ほぼ役立たず」であるという結論に達しました。

つまり、「得意かどうか」「合っているかどうか」という視点で職業選択をすべきではない。ということです。

学校での活用方法

基本的には、特性因子理論や適職診断テストは、学校での職業選択に活用すべきではありません。

もし何も考えずに活用している学校があれば(たくさんあると思いますが)、実施を中止すべきです。

ただし、自己理解や職業探求を深める1つの補助的なツールとして用いることはできます。

「自分にはこんな特徴があるんだ」「へー、こんな職業もあるんだ、調べてみよう」などど、新しい発見につながる場合もあるのです。

ただ、捉え方を間違えるというリスクを考えると、できれば実施しない方が良いのではないでしょうか。

まとめ

本記事では、得意で職を選ぶな、人と職のマッチング理論「特性因子理論」は実際にはほぼ役に立たないというお話をしてきました。

間違った無責任な情報に惑わされることなく、しっかりと考えて使えるようになりたいですね。

こちらも併せてご覧ください。