ドリーム・ハラスメントとは?夢で若者を追い詰める大人たちの罪【著者との対談記録あり】

ドリーム・ハラスメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
この言葉は、2020年にイースト出版より発売された高部大問さんの著書『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』のタイトルになっている言葉です。

実は私、この本に共感しすぎてしまい、著者である高部大問さんに「お話してみたい」とメールしてしまいました(笑)
大問さんは快く引き受けてくださり、
2021年2月20日に、音声SNS「クラブハウス」(Clubhause)内でトークイベントを実施することができました。
ホント楽しかったです。ありがとうございました(^^♪
※この記事を書いている私は、高校教師⇒大学職員⇒キャリアコンサルタントという経歴を持つ、キャリア教育の専門家です。
子どもたちと日々向き合い、最近の「キャリア理論」の虜になっている私(のような変わり者)には、本書の内容はぐさぐさっと刺さりました。
詳細プロフィールはこちらです。
それではどうぞ。
YouTubeで紹介しました(2021.4月更新)
今回は「ドリーム・ハラスメント」について紹介しました。 あなたは「無意識のドリハラ」をしていないでしょうか? 「夢は素晴らしい」と思っている人はぜひ一度読んでほしい1冊です。 ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち (イースト新書) 高部大問
ドリーム・ハラスメントの内容
本書は、「夢は強要するものではない」ことを切実に語っている本です。
本書の中の「夢」表現
本書では夢についての様々な表現が登場します。
これ、1つ1つが深くてめちゃくちゃ共感できるものばかり↓
夢に関する様々な表現
- 夢はハズレくじ
- 夢はないのが普通
- 夢は必需品ではない
- 夢のあおり運転
- 夢を待ち続ける「待機型」
- 夢を慌てて作る「即席型」
- 夢を取り繕う「捏造型」
- 夢=職業ではない
- Be型の夢・Do型の夢
- What型の夢・Who型の夢・How型の夢
- 夢の大量生産
- 夢は修正できる
- 夢は見てる時が一番幸せ
夢は本来的にハズレくじで、ないのが普通。
夢は必須じゃないし、夢にもいろんな形があるし、途中で変わったっても良い。
なのに、大人たちは夢を大量生産して、
夢を道具にして子供たちにあおり運転をしている。
そんなことが書かれています。
夢まみれの社会
夢を持てない子どもたちがいる。
夢を持てと言われ、苦しんでいる子どもたちがいる。
にもかかわらず、
スポーツ選手も、歌手も、学校も、国も、「夢を持つことは素晴らしことだ」とみんなが口にしてる。
でも、それっておかしくない!?
なんで大人たちは夢を強要するの?
夢がなきゃいけないの?
夢がない僕はダメな人間なの?
・・・そんな多くの人の心の叫びをまとめてくれた1冊です。
夢はないのが普通なのに、
なぜだか社会は夢まみれ。
- 音楽の教科書に載っている曲のうち、「夢」「ゆめ」から始まる歌は160曲以上
- 「夢」がタイトルにある邦楽は2000曲以上
- 「夢」が歌詞にある邦楽は60000曲以上
- キング牧師の演説は「I Have a Dream」
- 就活本でも「まず夢を持とう」
- 国の教育政策にも「夢を持て」
などなど。世の中が夢で溢れている現状を述べています。
特に高校生の進路選択や、大学生の就職活動の場面では、こうした夢に悩まされる若者があとを絶たない。
親が子どもにするアドバイスで最も多いものが
「自分が好きなことをしなさい、やりたいことをやりなさい」だそうです。
ステキな言葉に聞こえますが、
「やりたいこと=夢がないといけないんだ!」とプレッシャーにもなりえますよね。
大人たちは無意識のうちに子どもに夢というプレッシャーを与えているのでは??
この話を聞いて、私自身もぞっとしました。
夢にはいろんな形がある
夢にはいろんな形があります。
本書では「なりたい=Be型の夢」、「やりたい=Do型の夢」など、
夢にはいろんな形があることを述べています。
これには私もめちゃくちゃ共感できて、
夢にもいろいろあっていいじゃない。と思う。
「幸せになりたい」とか「マイホームを持ちたい」だって、夢と言っていいはず。
にもかかわらず、なぜか世の中の人は「夢=職業」になりがち。
「やりたいことは何?」=「やりたいことは何の仕事」になってしまっている。
「好きを仕事に」のようなキャッチコピーは聞いていて気持ちが良いものですが、
「夢=やりたいこと=好きなこと=職業」になっているのがめちゃくちゃ気持ち悪い…。
この気持ち、きっと共感してくれる人が多いと思います。
そして、私がめちゃくちゃびびっときたのは、
「夢は修正できる」という点。
そう、夢は決めつける必要なんてないですよね?
1つじゃなくても、たくさん持ってもいいですよね?
ここが、今の子供たちにすごく重要なんです。
現代キャリア理論と相性抜群
本書で述べられている夢に対する柔軟な考え方は、
実は今の時代を生きる「現代キャリア理論」と非常に相性が良いんです。
現代キャリア理論っていうのは、
変化の激しい今の時代にぴったりな、21世紀のキャリアの考え方のこと!
今までのキャリアの考え方は、
- つらくても諦めちゃだめだ!
- 若いうちにできるだけ自分に合った仕事を選ぼう!
- 会社にしがみつこう!
なんて考え方が主流だったけど、
21世紀のキャリアでは、
- 人生は偶然で決まる
- 目標は柔軟に変えよう
- 自分の人生を生きよう
なんて考え方が主流です。
こうした考え方をキャリア理論といって、専門的には、以下のような考え方があります。
21世紀にぴったりなキャリア理論
- 未来は予測できない・・・キャリア・カオス理論
- 計画より行動・・・キャリア・ドリフト理論
- チャンスを掴もう・・・計画的偶発性理論(プランド・ハップンスタンス)
- 見えない道を選ぼう・・・積極的不確実性(意思決定理論)
- 自分の軸を持とう・・・自己概念理論
- 価値観は変化・成長する・・・キャリア発達理論
- 人には譲れない価値観がある・・・キャリア・アンカー理論
- キャリアに意味を構築する・・・キャリア構築理論(ナラティブ・キャリア)
- 変わり続けよう・・・プロティアン・キャリア理論
- バランスが大事・・・ライフ・キャリア理論
- 経験が大事・・・キャリア学習理論(キャリア認知理論)
私は、21世紀にぴったりなこれらの理論をまとめて、「現代キャリア理論」と勝手に呼んでいます。
いろんな考え方があるんですが、共通するのは、「未来は予測できない」ってこと。
未来のことなんて分からないんだから、若いうちに人生を決めるなんてとんでもない!
ってことを、多くの理論家たちが口をそろえて言っているんです。
だから、「あなたの夢は何?」って聞くのは、今の時代にはやっぱり合っていないし、
多くの理論に裏付けされてるってことですね。
う~ん、この考え方、もっと世の中に広まって欲しいなぁ。
まとめ
本書「ドリーム・ハラスメント」は、夢について「これでもか!」と書かれた1冊でした。
夢で若者を追い詰める大人の存在、
そして夢の強要が起きる原因、
それに対応する方法。
こうしたことを考える1冊です。
ぜひ読んでみてくださいね。